森山のセンター国語全問詳解 ~2015(二)小説~

*問一  (ア)③ (イ)⑤ (ウ)③  各3点
(ア)透明な・・・「石を見つめる透明な行為」は「決まった形がない行為」である。
(イ)とくとくと・・・得意そうに
(ウ)追い討ちをかけて・・・何回も繰り返し働きかけること
*問二  ②  7点
傍線部A「言葉を持たない石のような冷やかさが、その冷たいあたたかさが、とりわけ身にしみる」とあるが、それはどういうことか。
*傍線部直前に「だから」という接続語がある。「だから」の前は原因・理由であり、「だから」の後は結果になる。
*「人間関係の疲労とは、行き交う言葉をめぐる疲労である」が原因であり、「言葉を持たない石のような冷やかさが、その冷たいあたたかさが、とりわけ身にしみる」のが結果となる。
*「人間関係」が「言葉」を必要とし「疲労」になるのに対し、「石」は「言葉」を必要としないので「安らぎ」を感じるという意味になる。
*以上のポイントをクリアーしているのは②のみである。
*①は「人としての自信を取り戻させてくれる」という記述が本文にない。
*⑤は「人の言葉に傷ついたわたしを静かに慰めてくれる」という記述はない。
*問三  ③  8点
わたしの山形さんへの見方は、この文章全体を通してみると変わっていくが、29行目から57行目までに描かれた山形さんの人物像はどのようなものか。
*該当箇所が長いので、消去法で解く。
①「テレビ業界の魅力を説くことで希望を与えてくれる」→テレビ出演に当たっては「見るの
と出るのでは、また違う。まあ、一度くらい、遊びにいらっしゃってはいかがです」としか述べていないので、「希望を与える」という表現は誤り。
②「テレビ収録で傷つき落ち込んでいるわたしにテレビ出演の楽しさを説いて自信を持たせようとする度量の大きさを持つ」→テレビ出演後に落ち込んでいる私に対して「テレビに初めて出た人間はそんなもんですよ」「ここを通過するとね、もう怖くはありません」「気をつけてくださいよ、テレビに出ることは、けっこう魅力があるようですから」と述べているが、テレビ出演の楽しさを説いているわけではないし、度量が大きい人間と判断できる部分もないので、誤り。
③「傷つき落ち込んでいるわたしを無表情なままに慰めてくれる」→「テレビに初めて出た人間はそんなもんですよ、と石のように表情のない顔で、のんびりとなぐさめてくれた」正しい。
③「揺るぎない態度でわたしの心情や行動を決めてかかる」→「自信を持って決めつけるのだった」「その動かぬ大山のような山形さんの言い方には、断わられることなど、おのれの辞書にはないというようなずうずうしさがあった」正しい。
④「自己嫌悪に陥ったわたしの心を気遣うふりをして、自身の趣味である石の魅力に引き込もうとする」→誤り
⑤「話題をそらしてごまかし、当初のインタビューとは関係のない個人的な趣味の世界に引き込もうとする」→誤り
*問四  ①  8点
傍線部B「当日は雨だった。しかし石を見に行くのにはいい日のように思われた。」とあるが、それはなぜか。
*傍線部直後に「傘というものがわたしは好きだ。ひとりひとりの頭のうえに開き、ひとりひとりを囲んでいる傘が。」に注目する。
*問二で「人間関係」が「言葉」を必要とし「疲労」になるのに対し、「石」は「言葉」を必要としないので「安らぎ」を感じる、という部分を想起する。
*「雨」-「傘」ー「ひとりひとりを囲む」-「言葉を必要としない」という発想の流れが、「石」に結びついている点を考える。
*また、12行目の「水辺の石の魅力をつくっているものが、実は、石そのものでなく、水の力であったということなのか。」という部分からも、「雨」-「水」-「石の魅力」というつながりを連想する。
*自殺した女性詩人に対しては「ひとりひとりの頭のうえに開き、ひとりひとりを囲んでいる傘が。そういえば、寂しい、独りきりの傘のなかを、華やかな世界と表現した女性の詩人がいたなあ。」と書かれおり、「傘」から、たまたま「そういえば」と思い出しただけであり、「石」と直接的に「女性詩人」がつながっているわけではない。
*問五  ②  8点
傍線部C「何かが何かを少しずつひっぱっている、その日は、そんな感じの日であった。」とあるが、わたしはどのようなことを感じはじめているのか。わたしの中で起こった変化を踏まえた説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
ここも該当箇所が広くなるので消去法で解く。
①「自分にもそうした両面があることを発見し」→「両面」とは「強引で何事にも動じない」部分と「疲れて自信のない」部分だが、作者は自分に「強引で何事にも動じない」部分があるとは思っていない。誤り
②「冷たい石と向き合う沈黙のひとときに安らぎを感じていたわたし」→問二・問四
②「山形さんの声は違和感なく受け入れられたことに意外な安堵を覚えている」→94行目「その、確かに実在する男の声は、不思議な浸透力を持ってわたしの身体に入ってきた」
②「山形さんのしっとりとした瞳の中に弱さを発見したわたしは」→99行目「決して強い目というのではない。疲れはてていて、むしろ気弱な目だ。」
②「山形さんとの人間らしい相互関係を自覚し、石を媒介として二人の心の距離が近付きつつあることを感じはじめている。」→102行目「わたしもそのとき、山形さんに、心を惹かれていたのかもしれない」
③「彼の見識の高さに感動したわたしは、自分も同じように石を出品してみたいと感じはじめている」→本文に記述がないので、誤り。
④「山形さんが石を愛するようになったことで孤独から脱するきっかけを得たように」→本文に記述がないので、誤り。
⑤「静まりかえったアトリエの中で生身の人間との言葉による心の交流が成立した結果、孤独な詩人であることから脱しつつあることを感じはじめている」→本文に記述がないので、誤り。
*問六  ① ⑤  各5点
この文章の表現に関する説明として適当なものを、次の①~⑥のうちから二つ選べ。
①21行目「こうしてみると、わたしだって、充分、アイセキカの一人ではないか。」この「アイセキカ」は世間一般から見た「愛石家」ではないので、カタカナ表記にしている。また29行目「ひとと石との、こうしたあらゆる関係の先に、石をただ見つめるという、アイセキカたちの透明な行為がひろがっているのだろう。」ここも「ひとと石とのあらゆる関係の先に石を見つめる」という行為は世間一般から見た「愛石家」ではないので、カタカナ表記にしている。よって正しい。
②「48行目の「こいけさん」は、ここでの山形さんの語りかけが、わたしの後悔を他人事とし
て突き放すような、投げやりなものであることを表している。」→この部分で「他人事とし
て突き放すような、投げやりな」態度は見てとれないので誤り。
③63行目は「期待したとおり、ずらっと小石どもが並んでいる。」と書いてある。「期待」というプラスイメージの言葉が使われている以上、「小石ども」の「ども」が、それを見下す気持ちというマイナスイメージを表すことはない。誤り。
④文章全体のテーマから考えて、「石」と「人間関係」が重要キーワードである。その「石からは次第に心が離れつつある」ということは読み取れない。誤り。
⑤これは読んだ通りで正しい。
⑥「ここではこれらの動詞を「音」に対して使うことによって、詩人であるわたしの表現技巧が以莇と比べて洗練されたことを表している。」→本文からは読み取れないので誤り。