試験によく出る「あなかま」

 センター入試古文では、「あなかま」という語は頻出です。参考書等には「しっ、静かに!」なんて訳が載っていたりするわけですが、実はこれ、もともとは「あな、かまし」という語なんです。
 「あなlという古語は感動詞で、現代語における「あぁ」という語です。また、「かまし」という古語は形容詞で、現代語の「やかましい」とか「かしがましい」の元になる語で、「うるさい」という意味です。
 ところで、これは現代語なんかでもそうなんですが、形容詞を使う場合、終止形で使うと、味も素っけもないつまらない言い方になりますよね。例えば、冬のある日、窓も開かないような寒い朝、学校に行かなくてはならなくてドアを開けた瞬間、「さむい。」って言ったら、驚きも感動もない、味も素っけもない表現になりますよね。そんな時は、形容詞の語幹部分(「○○い」の「○○」の部分)だけを使うんです。「さむっ!」って言うと、ほら、とても寒い感じがするでしょ? 驚きや感動が表れるでしょ? 思わず沸騰しているヤカンに手を触れて「あつっ!」とか、腐ってる物を目の前にして「くさっ!」とか、転んで「いたっ!」とかね! このように、形容詞の語幹部分だけを使って感動を表現する方法を語幹用法と言います。
 そこで、先ほどの「うるさい」という意味の古語「かまし」を語幹用法「かま」にして、感動を表します。さらに、そこに「あぁ」という意味の感動詞「あな」をつけて、「あなかま」になるわけです。ですから、この「あなかま」はもともとは「あぁ、うるさっ!」という意味なんですが、そこから転じて、「あぁうるさいから、静かにしろよ!」=「しっ、静かに!」と訳すわけです。
 ところで、この感動詞「あな」は「あや」と言う場合もあります。そして、「憎らしい」という意味で「憎し」という形容詞があります。
 例えば、ある事柄がうまくいかず、憎らしく思うことがあったとします。「あぁ、憎らしい!」って言いたいとき、古語では、感動詞「あな」+形容詞「憎し」の語幹用法「にく」で、「あなにく」にあります。でも、このままでは発音しづらいので、「な」が「い」に変化します。(これをイ音便と言います。)すると、「あいにく」となるのです。
 シルバーウィークはあんなにいい天気だったのに、今日は雨です。あぁあ、散歩行こうと思っていたのに! あぁ、残念で憎らしい雨! そう、「あいにく」な雨ですね!
 というわけで、本日は「あいにく」の語源でした!