読書で読解力は身に付くのか?

 「読書は人生を豊かにするか?」と聞かれれば、もちろん「イエス」と答えます。
 「読書で読解力は身に付くか?」と聞かれれば、しばらく悩んで「イエス」と答えます。
 「国語の成績が伸びないから読書をした方がいいか?」と聞かれれば、しばらく悩んで「ノー」と答えます。
 ところで「読書」って一口に言いますが、「読書」と言ったら多くの人は何を読むでしょうか? 漱石や芥川? 村上春樹や池井戸潤? ライトノベル系? あるいはノンフィクションやビジネス系? だいたいの人は過去の名作と言われる本、最近のベストセラーである小説やノンフィクション、そして小中生に人気のあるライトノベル、そのような本が頭に思い浮かびますよね。
 これらの本があなたの人生を豊かにするのは間違いのないところです。あなたが今まで知らなかった世界、あなたが今まで思いもつかなかった考え方、あなたが今まで想像さえしなかったストーリー、これらを知ることにより、あなたの人生は豊かになります。
 でも、それと読解力は別の話です。
 そもそも「読解力」とは何でしょう? 「読解力」とは「言語を道具とする思考力」と言えます。「思考力」は物事を論理的に考える力で、与えられた材料を使いながら、「判断・推理」を積み重ね、「あることについてつじつまの合う理解や説明ができる」という力です。
 つまり「読解力」を育てるには、「言語的素材(=文章)」を「つじつまの合う理解」ができるまで「判断・推理」しながら「思考」していく必要があるのです。
 では、あなたが中学生、あるいは高校生、あるいは大人だとします。仮にここに小学校1年生の教科書があったとして、それを読んで読解力は身に付くでしょうか? 答えは「ノー」です。なぜなら、小学校1年生の教科書レベルの内容ならば、「判断・推理」などを用いて「思考」しなくても、簡単に「言語的素材」を「理解」することができるからです。
 このように、一読してある程度内容理解ができてしまうような文章は、何冊・何十冊読んでも、「読解力」は身に付かないのです。
 さきほど述べた、漱石・芥川・村上春樹・池井戸潤・ライトノベルの内容が簡単で一読してある程度内容理解ができてしまうというわけではありません。でも、小説やノンフィクション系の場合は、実質的な理解がストーリー展開によって自然と補えてしまうので、「判断・推理」などを用いて「思考」する必要性が非常に少なくなってしまいます。
 もちろん、このような本を読んでも読解力が全く身に付かないわけではありません。ただ、「判断・推理」などを用いて「思考」する必要性が非常に少ないので、「読解力」を身に付けるためにこれらの本を読書するメリットはあまりないと思います。これらの本を読む必要性は、「人生を豊かにする」ためのものなのです。
 「読解力を身につけるために読書をしよう」なんて考えないで、「面白いから、楽しいから、読書をしよう!」と思って欲しいと思います。
 ところで、では、どうやったら「国語の成績をあげる」ことができるのでしょうか? それは次回お話します!