物体にかかる力と速度の関係(中学生版)② ~時習館の極上の理科~

●速度が変化する一定の割合を加速度と呼ぶ!
 さて、前回、「外から力をかけ続けた場合は、一定の割合で速度を増しながら動き続ける」と述べました。この速度の変化の割合のことを「加速度」と呼び、速度の変化の割合が一定の時には「等加速度」と呼びます。ですから、先ほどの文は「外から力をかけ続けた場合は、等加速度運動をする」と言い換えることができます。
 ところで、この「加速度」は何によって決まるのでしょうか?
●加速度は力に比例する!
 前回のように、スケートや宇宙空間のイメージを思い浮かべながら考えてみよう。まず、最初は物体Aが静止している。次にその物体Aを想像上で「弱い力」で押してみよう。もちろん物体Aは動き始めるね。そしてさらに「同じ弱い力」で押し続けると、だんだんに一定の割合で物体Aは速く動き始める。でも押している力は「弱い力」だから、それほどすぐに速くなることはない。だんだんに、ゆっくりと速くなるのだ。
 では今度は、最初は静止している物体Aを、想像上で「強い力」で押してみよう。すると物体Aは動き始める。そしてさらに「同じ強い力」で押し続けると、どんどん一定の割合で物体Aは速く動き始める。もちろん、先ほどの「弱い力」で押したときと比べて、速くなる割合は非常に大きいんだ。どんどん速くなっていくね。
 つまり、「加速度は力に比例する」ということがこれでわかるんだ!
●加速度は質量に反比例する!
 同様にスケートや宇宙空間のイメージを思い浮かべながら考えてみよう。今度は、押す力を同じにしよう。その時、重い物体と軽い物体があったら、どちらの方が、速くなる割合が大きいだろうか? わかるよね? そうだね、軽い物体の方が、速くなる割合は大きいはずだ!
 つまり、「加速度は質量に反比例する」ということがこれでわかるんだ!
●加速度は力に比例し、質量に反比例する!
 以上から、加速度は力に比例し、質量に反比例するので、式に表すと、次のようになるんだ。
 加速度 = 力 / 質量
 ここで、この式を少し変形すると、以下のような式になるよね。
 質量 × 加速度 = 力
 実はこの式こそ、ニュートンが導き出した、運動方程式という式で、物理の古典力学という分野で最も重要な式なんだ! 古典力学と言っても、別に古い学問というわけではない。私たちの日常の身の回りに起きる物体の諸現象や運動はすべて、この古典力学によって示されるんだ。いや、もっと言えば、私たちの身の回りの現象は、すべてこの運動方程式に沿って動いているんだ!
●未来はすべてお見通し・・・ラプラスの悪魔!
 さて古典力学では、この運動方程式により、すべての物体の位置と速度を計算できるんだ。それはどんな状態でも計算できるし、現在だけだけではなく、過去も未来も物体の位置と速度を計算できる。これはすごいことだ!
 ところで、この世界はすべて「原子」という物体から成り立っている。物だけではない。生物だって原子から成り立っているんだ。そして例えば人間の意識や遺伝子もすべてこの原子によって成り立っているんだ。
 だとすると・・・、フランスの数学者、ピエール=シモン・ラプラスはこう述べた。「世界に存在する全ての原子の位置と運動量を知ることができるならば、古典物理学を用いれば、これらの原子の過去や未来の位置と運動量を知ることができるので、その先の世界がどのようになるかを完全に知ることができるだろう」 この恐ろしい事実を「ラプラスの悪魔」と呼ぶんだ。
 未来さえ予測できる、これがこの運動方程式のもつ力なのです! ・・・でも実は、原子レベルという極小のミクロの世界では実は古典力学は成り立たないということが発見され、代わりに量子力学という学問が発達することになるんだ。つまり、実際にはラプラスの悪魔は存在しないわけなんだけれど、でもこの運動方程式の持つすごさがすこしは伝わったのではなかろうか?
 次回は、この運動方程式からわかることを説明します!