中学数学 記述対策第3回

前回に続いて文字と式の記述問題について考えてみましょう。

【問題】円柱Aがあります。いま、この円柱の底円の半径を2倍にして、高さを半分にした円柱Bを作ります。円柱Bの体積は円柱Aの体積の何倍になりますか。考え方がわかるように説明しなさい。

■「思い込み」に注意する問題について

さて、この問題は一見すると体積は変わらないのではないかと考えてしまいそうです。半径を2倍にする一方で高さは半分つまり0.5倍ですから
2×0.5=1
したがって、もとの体積と変わらないように感じられます。
これは出題者が意図的に「思い込みはアテになりませんよ」と解答者にメッセージを投げかけている典型的な問題です。では本当に等倍ではないのでしょうか。ここで文字式の出番です。第2回で説明したように、こうした問題は一般化が大事です。以下のように考えてみましょう。

■解答例

円柱Aの半径をr(cm)、高さをh(cm)とします。
このとき、円柱Bの半径はAの2倍ですから2r(cm)、高さは\frac{h}{2}(cm)と表せます。

円柱Aの体積を求める式は
\pi r^2 h・・・①
円柱Bの体積を求める式は
\pi (2r)^2 \frac{h}{2} =2 \pi r^2 h・・・②
とそれぞれ表せます。

①と②の式より、円柱Bの体積は円柱Aの体積の2倍であることがわかります。

■まとめ

この問題は小学生の頃に学習した「半径を2倍にすると、円の面積は4倍になる」という有名な考え方をベースにしています。学習した当時は当たり前だった内容も、改めて出題されると意外に盲点になっているものです。なおこのタイプの類似問題は非常に多く、高校入試数学の大きなテーマの1つです。こうした問題に対処していくには
思い込み(先入観・偏見)を持たない
という姿勢が何より大切です。そのためには日ごろから論理的に考え、実際に立式して確かめる、という取り組みを大事にしましょう。