森山のセンター国語全問詳解 ~2015(三)古文~

問一  (ア)④ (イ)② (ウ)①  各5点
(ア)あじきなき嘆き
*傍線前後は「男の御心には、まして恨めしう、あぢきなき嘆きに添へて」となっているので、傍線部分の主体は男君。またこの部分の客体が「御子」になるならば、その後の「御子の御気配もいとつつましう」という部分に矛盾するので、傍線部分の客体は「女君」であろう。
*「あぢきなし」・・・①おもうようにならない ②つまらない・無意味だ
*「嘆き」・・・苦しみ・悲しみ
*以上から「男君が事情によって会うことができない女君に対する苦しみ」なので④が正解。
(イ)あきらめてしがな
*「てしがな」・・・願望の終助詞 ~したい
*傍線前後は「御子の御気配もいとつつましう、鏡の影もをさをさ覚ゆれば、いよいよ「あきらめてしがな」と思しわたれど」であり、口語訳すると、「皇子のご様子(を見るの)もたいそう遠慮され、鏡に映った男君自身の顔も皇子にそっくりなので、ますます「~~したい」とお思い続けになるが・・・」となる。
*男君は自分の顔と皇子の顔がそっくりであり、その子を自分の子と確信している。しかし、表向きは帝の皇子ということになっている点に苦悩している。
*「てしがな」=「~したい」という文法から、選択肢は①②③に絞られる。この中で文脈に合うものは②である。正解は②。
*「あきらむ」=「明らむ」・・・はっきりとさせる・明らかにする
(ウ)御こころざしのになきさまになりまさる
*「こころざし」・・・愛情
*「になし」=「二無し」・・・(二つと無いほど)この上ない
*以上から①が正解となる。
問二  ⑤  5点
波線部a~eの敬語の韓組合せとして正しいものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
*波線部a「侍り」・・・①「仕ふ」の謙譲語 ②「あり・居り」の丁寧語 ③補助動詞の丁寧語
→ 意味的に①ではない。また形的に③でもない。よって②の丁寧語
*波線部b・波線部c「給ふ」・・・①ハ行四段の尊敬補助動詞 ②ハ行下二段の謙譲補助動詞
→波線部bは「給はぬ」=「ハ行四段未然形」なので、尊敬語
→波線部cは「給へし」=「ハ行下二段連用形」なので、謙譲語
*以上から、波線部a=丁寧語 波線部b=尊敬語 波線部c=謙譲語 は①か⑤になる。
*選択肢を比較すると、①の波線部bは「御方々」からの敬意、⑤の波線部bは「清さだ」からの敬意であるが、「誰からの敬意か」という部分は会話文では話し手になるので、波線部bの会話文の話し手を考える。
*波線部bの会話文は「清さだ」の会話になるので、⑤が正解となる。
問三  ③  7点
傍線部X「いとど恥づかしう、げに悲しくて」とあるが、このときの女君の心情の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
*傍線部の前後をまずできる部分だけ考えてみる。
*「『いかで、かくは言ふにかあらむ』とて、泣き給ひぬ。」→「給ひ」という尊敬語が使われているので、ここで泣いている主体は女君。
*「『御覧ぜざらむは、罪深きことにこそ思ほさめ』とて、うち泣きて」→「うち泣きて」に尊敬語が使われていないので、ここで泣きながらこのセリフを述べているのは右近になる。
*「『昔ながらの御ありさまならましかば、かくひき違ひ、いづこにも苦しき御心の添ふべきや』と、忍びて聞こゆれば」→前の部分から「うち泣きて」と接続助詞「て」で続いているので、主体は変化せず、しないので、このセリフを述べているのも右近になる。
*「御覧ぜざらむ・・・」と「昔ながらの・・・」の二つのセリフを「忍びても聞こゆれば」、「(傍線部)いとど恥づかしう、げに悲しくて」となる。
*「聞こゆれば」は順接確定条件なので、右近が二つのセリフを申し上げることが、傍線部分の原因理由となる。
*すなわち、①「御覧ぜざらむは、罪深きこと」=「ご覧にならないのは罪深いこと」 ②「昔ながらの御ありさまならましかば」=「昔のままのお二人であったならば」 という2つが重要ポイント。よって正解は③になる。
*傍線部前後口語訳
「どうしてこのように言うのでしょうか」と、女君はお泣きになった。
「このたびは、あきらめているのでございましょう。(「とぢめ」→注6「いかに思しとぢめけむ」から類推)(男君からの手紙を)ご覧にならないとしたら、罪深いことであると(女君は)お思いになる方がよろしいでしょう。」とって(右近も)泣いて、
「昔のままの(お二人)ご様子でいらっしゃったのならば、このように引き分かれ、どこにいても苦しい思いを心に添えることでしょうか」と、人目を避けながら(右近は女君に)申し上げるので、(女君は)たいそう恥ずかしく思い、また本当に悲しくて、(男君からの手紙も)振り捨てることもできず、ご覧になる。
問四  ③  9点
本文中の手紙A(男君の手紙)、手紙D(女君の手紙)の内容の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ
*それぞれの和歌と手紙をしっかりと解釈することが最も重要。
*Aの男の手紙の和歌「さりともと頼めし甲斐もなきあとに世のつねならぬながめだにせよ」→「そうは言っても(あなたが私を忘れるはずはない)と頼りとしていた甲斐もなく(あなたに逢えなくなってしまったので、その悲しみで)私が死んでしまったあとは、いつもとは違う長く降る雨を見ながら、私のことをせめて物思いだけでもして下さい。(ながめ→「眺め」「長雨」の掛詞」
*Aの男の手紙の後半「ほどなく魂の憂き身を捨てて、君があたり迷ひ出でなば、結びとめ給へかし。」→「まもなく(悲しみのあまり)魂が私の現世の身体を捨てて、(死んだ後)あなたのいるあたりに迷い出たとしたら、私の魂をつなぎとめてくださいよ。」
*Bの女の手紙の和歌「思はずも隔てしほどを嘆きてはもろともにこそ消えもはてなめ」→「思いもかけず、私とあなたは隔たってしまいましたが、そのことを嘆き悲しみ、いっそのこと一緒に死んで消え入り果てたいものです」
*以上から正解は③になる。
問五  ④  7点
傍線部Y「方々思ひやるにも、悲しう見奉りぬ」とあるが、このときの右近の心情の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。
*傍線Yの部分の前後をできるだけ考える。
*「書かせ給ひても、え引き結び給はで、深く思し惑ひて泣き入り給ふ。」→尊敬語が使われているので主体は女君。「え引き結び給はで」とは、「引き結ぶことができないで」の意味。引き結ぶことができないのは文=手紙である。なぜ文を引き結ぶことができないかというと「泣き入り給ふ」からである。すなわち、女君は、あまりの悲しみに、手紙を書き、引き結ぶこともままならない状態なのである。
*「かようにこと少なく」=「このように言葉少なく」→これは、悲しみのあまり、手紙そのものも十分に欠けていない女君の様子を示す。
*「あはれにもいとほしうも御覧ぜむ」=「しみじみと気の毒にご覧になるだろう」→手紙をご覧になるのは男君。男君が、言葉少ない女君の手紙を「しみじみと気の毒にご覧になる」のは、女君の悲しみを男君も理解しているから。そういう意味では二人は心が通じ合っているはずだと右近は考えている。
*以上から答えは⑤
*①「女君は立場上、簡単な手紙しか書けない」→悲しみのあまりかけないので誤り。
*③「男君は女君をいとしく思いつつもいよいよ落胆するだろう」→落胆はしない。
問六  ⑤  7点
この文章の内容の説明として最も適当なものを①~⑤のうちから一つ選べ。
*ここまでの内容を考えれば正解は⑤になる。
*①「未練がましく言い寄っても女君が不快に思うのではと恐れて」が誤り。
*②「女君は…ついには人目を忍んで男君への手紙を右近に取り次がせようとした」が誤り。
*③「清さだは…帝が真相に気づいたのではないかと心配になり…急いで右近に手紙を送った」が誤り。
*④「男君は…東宮のもとに無理に出仕をしたため病気が重くなり」が誤り。
 
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